017:√

 √って、何なんだろう…


 ふとそう呟くと、
「…あんた、先生の話聞いてた?」
 大きなため息を吐かれた。そして、
「いい? 2乗すると正の数aになる数を、aの平方根って言うの。つまり3や−3は2乗すれば9になるから、3と−3は9の平方根であって…」
「そういうことじゃなくて!」
 つい先程の授業で板書したノートを開き、スラスラとそれを読みあげる彼女を制した。
 確かに、昨日遅くまで起きていて寝不足であるため、授業内容は殆ど覚えていない。まして平方根の説明をされてもサッパリ分からなかった。
 だが聞きたいのは、そんなことではなく。

「勉強する意味はあるのかなってこと」

 受験のためだけに勉強する。
 大人になれば必要のなくなる知識。
 覚えていても将来役に立ちそうにない、無駄な知識。
「そうだねぇ…、私はコレも無駄な知識だと思うけど」
 指差す先には、この後ある授業の古典の教科書が。
「ま、人それぞれってことでしょ。無駄だった、で終われば、勉強しててよかったって思う人だっているんだよ」
 ふぅん…と彼女の顔を見ながら、既にどうでもよくなったのか机に突っ伏した。
 自分から聞いてきたくせに…、と思う。
 だが相当寝不足なようで、仕方ないかと、これ以上話をするのは諦めた。