昔、小さい頃に見せてもらった記憶があった。
初めて目にした時、銀色ですごくピカピカしてて、綺麗だなぁと思ったことも憶えてる。
だからこそ言ってみたんだ。
「ねぇお母さん、ハーモニカ出してくれない?」
掌サイズの紙箱は既にボロボロで、年季が入っていることは直ぐに分かる。
そして、それに息をふぅっと吹きかけると。
「うわ、埃っぽ〜い……ケホ」
白いっていうか、灰色の煙が舞う…。
無駄なんだろうけど、思わず掻き消そうと手を手前で動かした。
案の定、あんまり変わらず。
とにかく早くこの紙箱の中身を手にしたくて、蓋を開ける。
――…紙箱とは違って、まだ全く色褪せていない、銀色の小さな吹奏楽器。
知らない間に感嘆を漏らしてた。頬の筋肉が弛んでいくのも分かる。
「でも、また何でハーモニカ?」
お母さんが、これを奥から出すために使った椅子を片付けながら訊いてきた。
突然言ったんだから、そう訊いてきても不思議じゃないけど。
……でも。
「ん〜…まぁ秘密ということで」
別に言っても支障はない。うん、ない。
ただちょっと恥ずかしいかなぁって。
これを見せてもらった頃の自分に、戻ってみたいだなんて。
お母さんが莫迦にして笑うことはないと思うけど、念のため。
部屋に戻って、ベッドに座る。
音階なんて分からないから、とにかく今は適当。
そっと口唇を当てて、更にそっと息を吹いた。
微かに、ゆっくりと音が鳴る。
あぁ、この感じ。懐かしい…。
あんまり強く息を吹いたり吸ったら、音大きいからそっと、そっと。
……これ、もらっちゃ駄目かなぁ。
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